Blog:「カウンセリングと医療のどちらにかかったらいいですか?」

初回申込みのお電話をいただく際に、表題通りのご質問をよくいただきます。また、「精神科や心療内科にかかっているけれど、主治医の先生があまり話を聞いてくれない、だからカウンセリングを申し込みたい」というお話もよくうかがいます。医療機関の診察とカウンセリングの違いは、スタッフが話を聞いてくれる時間の長さだけでしょうか。

今回は「精神科や心療内科などの医療機関の診察」と「カウンセリング(以下心理療法含む)」の違いについてお話しさせていただきます。

まず精神科や心療内科での診察は、精神科医が行っています。精神科医はこころの病気(主に脳の不調)の診断と、薬物療法を中心に担当します。病気の悪化あるいは休養が必要な場合は、入院治療を提案します。また、治療に必要な生活指導やリハビリテーションの提案をすることもあります。なお症状の所見や治療内容、投薬内容などを記した診断書の発行は、医師にしか出来ません。

精神科医は来院された方のお話を丁寧に聞きますが、それは主に適切な診断と薬物療法が目的です。例えば困っている症状はどのようなものか、身体症状はないか。薬を飲んでみてどうだったか、副作用は気になるか…といったようにです。心理支援、つまりカウンセリングは医師が行う治療の中心ではないのです。心理支援が必要と思われる場合には、医師が直接行うのではなく、カウンセリングルームのような専門機関を紹介します。また医師による医療行為は保険適用となりますから、カウンセリングに比べれば金銭的な負担が少なく済みます。

一方カウンセリングは、臨床心理士や公認心理師が臨床心理学を基盤として行う心理支援の1つです。臨床心理士や公認心理師は診断や薬物療法を行うこと、診断書の発行は出来ませんが、カウンセリングや心理検査などの心理アセスメントを中心に行います。目的は病気の治療というより、それよりも扱う範囲が広く「こころの困りごと全般」の解決となります。もちろん病気からくる困りごともこの中に含まれます。こころの困りごとの解決には時間と来室回数が必要で、多くの方は毎週~月1回の頻度でカウンセリングを利用されています。こちらは保険適用となりませんから、医療に比べて高額となってしまいます。

それではカウンセリングと医療とでは、どちらにかかったらよいでしょうか。

この悩みを抱えている方はいずれも「こころの困りごと」を抱えていることで共通しているのですが、医療を第一選択とした方がいいというポイントを挙げていきます。まず1つ目は、「その困りごとに薬物療法を必要としているか」です。薬を飲むことに抵抗があるという方は当然いらっしゃいますが、薬が解決の一番の近道となる困りごとも一部あります。ポイントの2つ目は、「眠れているか・食べられているか・動けるか」です。身体の不調が深刻である場合は、緊急対応が可能な医療の方を選択してください。またこのこととも関連しますが、ポイントの3つ目は「ある程度の時間人と対話できるエネルギーがあるか」です。カウンセリングでの対話は、思いのほか疲れるものです。疲労が深刻な場合は、医療にかかることや休養を先にした方が良いでしょう。

どちらにかかるかを選びにくくしている一番の原因は、医療が扱うこころの病気と、カウンセリングで扱うこころの困りごととが、きれいに分けられないからであると考えられます。困りごとが原因で病気になりますし、病気になったことで困りごとが生じることもあるように、それぞれは影響しあっています。迷うのは当然ですね。

当室のカウンセリングでは、必要と思われる方にはご希望に応じて医療機関を紹介しています。カウンセリングと医療に並行してかかることも可能です(通院先はどこでも結構です)。なお、医療にかかっている方がカウンセリングを受ける際には、主治医にご相談の上、許可をいただく必要がございます。

何か気になることやご不明な点がございましたら、ぜひお問い合わせください。(K)