Blog:書籍「セルフケアの道具箱」のご紹介

『セルフケアの道具箱-ストレスと上手につきあう100のワーク』(伊藤絵美 著  晶文社 2020)を読みましたのでご紹介させていただきます。 

晶文社HPへ → https://www.shobunsha.co.jp/?p=5792

ストレスがたまって苦しい、人間関係で疲弊している、

先行きが不安で眠れない……。

こうしたメンタルの不調から回復する近道は、

自分で自分を上手にケアすること。

本書カバーのそでには、上記のような一文があります。コロナ禍もあり、ストレスを感じない日は無い…という方も多いのではないでしょうか。また、こちらのページにお越し下さったという事は、何らかの心身の不調や変化を感じていらっしゃる、またはそれが続いているところなのではないかと思います。本書ではそういったストレスや心身の不調を抱えた方に向けた、セルフケアの方法が紹介されています。著者である伊藤先生はストレスマネジメント、認知行動療法、マインドフルネス、スキーマ療法などをご専門とされ、その理論や手法を基にこの本を書かれました。この本は一般書でありながら、専門的に効果を実証されたアプローチに根差したものと言えます。

ここまで読んで「難しい本か、読む気にならないよ」と思われた方、そんな事はありません。いま一度、先頭に載せた本書の表紙をご覧ください。この表紙から受ける柔らかなイメージは、この本そのものだと思います。
この本をお勧めする第1の理由が、この「見やすさ」です。ストレスを感じている時、本を手に取って読むことは気が進まない方も多いでしょう。私自身も疲れを感じる時は小さい文字や漢字で埋め尽くされた文章は読む気にならず、読んでもちっとも頭に入って来ません。その点、本書は文字は大きく、余白も十分にあります。だいたい見開きで1つのワークが提示され、イラストもあるので視覚的に捉えやすく理解しやすい内容です。脳が受ける負担も考えて構成されているのではないでしょうか。

お勧めする第2の理由は、「使いやすさ」です。本書は以下のような10章で構成され、1章ごとに10個の実践できるワークが紹介されています(10のワーク×10章で100個のワークというわけですね)。

第 1 章  とりあえず、落ち着く

第 2 章  誰かとつながる

第 3 章  ストレッサーに気づいて書き出す

第 4 章  ストレス反応に気づいて書き出す

第 5 章  マインドフルネスを実践する

    (身体、行動、五感を使って)

第 6 章  マインドフルネスを実践する

    (思考、イメージ、感情に気づいて手放す)

第 7 章  小さなコーピングをたくさん見つけよう

第 8 章  生きづらさの「根っこ」と「正体」を見てみよう

第 9 章  「呪いのことば」から「希望のことば」へ

第10章 「内なるチャイルド」を守り、癒す

ここには載せませんが実際の目次には1つ1つのワークの見出しも載せられているので、自分の気になったところ、やれそうなところ、必要性を感じているところ、何でも良いので好きなところから始める事が出来ます。合わないな、と思ったら別のワークへ移るのもよいでしょう。もちろん「一から順にやりたい」という方はそうされるのが良いと思います。どのワークも手軽で、かつ有効性が見込めるものばかりです。いつでも、どんなやり方でも自分に合ったものを取り出せる、まさしく「道具箱」なのです。また、「ストレス心理学」「認知行動療法」「スキーマ療法」などの用語についても解りやすい解説がされていますので、知らない用語があってもスッと読み進められると思います。

ちなみに私がよくやっているコーピング(対処法)は、落ち着かない時は呼吸法、悲しみや淋しさがある時はフワフワした柔らかい質感の物に触れる、イライラした時は野菜をひたすらみじん切りにする、嫌な事があった時は誰も居ないところで呟いてそのことばが風に乗って飛ばされていくイメージを持つ、自分が酷くダメなように思えた時は手の平を身体のどこかにあててその温かさが自分の中に広がっていくのを感じる…などです。

 ストレス発散の仕方が解らない、気持ちの切り替えが上手く行かないという方、ぜひこの本を手に取り、参考になさってみて下さい。合うものも合わないものもあるでしょうから、まずはお試しのつもりで取り組んでみてはいかがでしょうか。ただし、身に付けるにはくり返しが必要です。自分の対処法を増やしたいと思うのなら、暫くの間くり返しくり返し取り組んでみて下さいね。
中には今まで自分が無意識にやっていたものが見つかる方もいるかもしれません。その場合は、これからはぜひ意識的に取り組んでみて下さい。「意識する」「自覚する」というのはとても大切で、自分を確かにしてくれます。今回のストレス対処に関して言えば、「ほんの少しでも自分なりに対処出来ている」という感覚に繋がると思うのです。

ストレス対処の一つ一つはささやかなアクションに過ぎず、問題の根本的解決にはならない、その場しのぎのように感じられるかもしれません。けれど、この「しのげる」という事だけでも大きな意味を持つと私は思っています。どうにもならない問題や自分自身を抱えながら、それでも生きていかなければならない。その中でほんの少しでも自分が自分のためにしてあげられる事がある、どんな状況でも自分自身を大切にすることも出来るのだと感じられる瞬間は、小さくとも大きな糧になると思うからです。

「セルフケア」は自分で自分を楽にする方法です。けれど本書にも書かれている事ですが、「なんでもかんでも一人で解決できるようになる事」を目指すものではありません。『自立とは依存先を増やすこと』という熊谷晋一郎氏のことばは本書でも引用されていますが、私も好きなことばの一つです。人を頼れる、何かに身をゆだねることができる、というのも大事なセルフケアの一つですね。「それでいいんだ」と思えることもセルフケアの一つだと思います。

自分で自分をケアするためのワーク、ぜひ手に取り1つ2つとワークを実践してみて欲しいと思います。自分を大切にする一歩として。(N)