— バウンダリー(心の境界線)を意識しよう 第3回(最終回)
シリーズの最終回です。バウンダリーとは「心の境界線」のことで、自分と他者とを分ける心理的な境界線や、自分がどこまで相手を受け入れられるか、どこからが許せないかといった範囲のことをいい、このバウンダリーが機能していないと、人間関係に様々な問題が起こります。
➡ 第2回「健全なバウンダリーを形成できない原因は?」はこちら
今回はそのバウンダリーをうまく引くコツについて、お伝えできればと思います。
そのコツは大きく3つに分けられます。
- 自分のバウンダリーをはっきりさせる、バウンダリーの範囲を理解する
- 自分のバウンダリーを維持する
- バウンダリーの存在を相手に知らせる
① 自分のバウンダリーをはっきりさせる、バウンダリーの範囲を理解する
最初の「自分のバウンダリーをはっきりさせる、バウンダリーの範囲を理解する」ですが、これは簡単に言うと「自分の、自分による、自分のためのルールを作る」ことです。例えば友達にはお金を貸さない、何を置いても自分の体調を優先する、人と約束するのは月に1回まで、誰それからかかってきた電話には出ない…などのようにです。このルール設定のコツは、社会通念や他者視点で考えずに、ひたすらに自分が許せる範囲、限界を決めることです。つまり自分だけのための「自分ルール」です。その設定の為には自分の感じる快・不快を十分に、そして細やかに知っておく必要があります。
② 自分のバウンダリーを維持する
2つ目の「バウンダリーを維持する」については、①で設定した自分ルールを常にチェックしながら過ごすことが大事です。その際はこの自分ルールを基にして過ごしながら、純粋に楽しいか?気持ちが良いか?自分以外の人に気を取られていないか?そこに時間やお金を割く必要があるか?などの視点を持って自らを観察し、問いかけてみましょう。そして決めた自分ルールは適宜修正をしながらも、出来る限り守っていくことが必要です。
③ バウンダリーの存在を相手に知らせる
そして最後の「バウンダリーの存在を相手に知らせる」についてですが、これは「私はこういうことが好きでここまでが対応可能で、こういうことができない、したくない人なのですよ」と、他者に表明していく行為です。Noと言えない人にとっては、とてもハードルの高いことかもしれません。例えば「時々体調が悪い日がありますから、急にキャンセルすることがあるかもしれません。それでよろしければ会う予定を立てましょう」などのようにです。これは「自分の体調を優先する」という自分ルールから外れていませんし、相手にそれを伝えるまでがこちらの責任で、その後会う予定を入れるかは相手の判断と責任になります。自分ルールや限界を伝えるには態度ではなく言葉の方がズレがなく良いのですが、言語化が苦手な人は、「アサーション」という考え方を学ぶと参考になると思います。
「自分ルール」=「バウンダリー」
ここまで「自分ルール」という言葉で説明してきましたが、これを全て「バウンダリー」と言い換えてみましょう。バウンダリーは目に見えない抽象的な概念のように聞こえ、「バウンダリーを引く」というと大変な作業のように感じますが、このように細かく自分ルールとして設定していくと具体的でわかりやすくなりませんか。
つまりバウンダリーを引くというのは、自分ルールを明確にし、相手にもお願いして協力してもらい、円滑で心地の良い人間関係を築くための行為といえます。
大切なのは「自分軸」
Noと言えない人は、バウンダリーが曖昧であることから自分ルールも他者視点で作ってしまい、行動規範を「他者に迷惑をかけないこと」、「相手の嫌がることをしないこと」などとしている可能性があります。その「他者」や「相手」は無数にいるため、そのルールは現実的に非常に適用しづらいものとなります。常にその時々の相手の快・不快に合わせた行動を取ることになり、緊張が抜けず、やがて疲れてしまうでしょう。
大切なのは自分軸です。自分の快・不快を定点としてみませんか。
「バウンダリーを健全に引く」には、まず自分の快・不快を十分に細やかに理解し、自分はどういった人や環境が楽なんだろう…といったことを考えることから始めてみましょう。その考えを広げた先に、自分にとって心地よい相手との距離感、バウンダリーがゆっくりと確立されてきて、今までのように人間関係に悩まされ過ぎない日がやってくるかもしれません。
他者との間に健全なバウンダリーを引くことは、自分を守り、自分を大切にするためにとても大切な行為です。なかなかうまくいかない、難しいと思う方は、ぜひ一度ご相談にいらしてください。一緒に考えましょう。(K)